こんにちは、たどんです。
今回ご紹介するのは、沢木冬吾著「約束の森」です。
日本のハードボイルドです。
簡単なあらすじ
主人公の奥野侑也は元警視庁公安部に所属していた警察官だった。
殺人事件で妻を殺害された奥野は喪失感に包まれ、5年前に40代半ばで警視庁を退職し、生きる意味も失い、孤独に毎日を過ごしていた。
そんな奥野の前に、奥野の以前の上司の紹介で、警視庁公安部の緒方が訪れる。
緒方は、奥野に「モウテルの従業員として働きながら、ある仕事のサポートをして欲しい。」と協力を依頼してきた。
東京の北約600キロにあるそのモウテルで、汚れ、傷ついたドーベルマン犬を見た奥野は、その仕事を引き受ける。
モウテルに着いた奥野は、以来の条件にあった若い男女とドーベルマン犬と同居し、従業員として働き始めるが、ここからドラマが動き出す。
「約束の森」の読みどころ
本物のハードボイルドだ
日本にもハードボイルド作家は大勢います。
その他にも、大沢在昌、大藪春彦、逢坂剛など、素晴らしい作品を書いてくれています。
しかし、作家の人数や作品数など総体的に見ると、外国のハードボイルド作家に分があるようです。
「約束の森」のクライマックスは、そのへんの外国人作家には負けないバトル、以前当ブログでも紹介したランボーの原作となった「一人だけの軍隊」をも凌ぐアクション満載です。
映画ランボーの原作「一人だけの軍隊」映画を観た方でも楽しめます
純粋に面白い。他に表現のしようがない。
設定に多少の無理はあるが・・・
警視庁を退職した人間に、公安という天下国家の存亡に関わる作戦の手助けを要請する、ということは100%ありえないでしょう。
また、警視庁を退職して約5年、無為の生活を送ってきた者が、クライマックスシーンに見られるようなアクションなどできるはずもありません。
しかし作者は、導入から結末まで、強引に無理な設定を通すことなく、こういうこともあるかなあ、と読者に思わせてくれます。
まあ、いつも言いますが、小説は楽しければ何でもありです。
主人公をめぐる人間模様
最愛の妻に先立たれ、5年間世捨て人のような暮らしをしてきた主人公。
自分の意志などなくあてがわれたような同居人の男女、ドーベルマン、モウテル周辺の人々、はじめから打ち解けた付き合いなどできるはずもない。
ギクシャクしたよそよそしい関係が、徐々に信頼に変わる。
この主人公を巡る人間模様も読みどころの一つです。
悲劇の結末は嫌いです!(ネタバレ注意)
私は、悲しい結末は嫌いです。
やはり読書は楽しくないと。
そして読んだあとに爽快感がないと。
安心してください。
本書はハッピーエンドです。
ぜひ読後の爽快な気分を味わってください。
警視庁公安部
警視庁公安部は、秘密のベールに包まれた組織です。
その職務は、極左、右翼、外事、テロ、など、日本国家の存亡に関わる仕事です。
職員の中には、主人公のようなスーパー警察官もいるかも知れません。
でも、スーパー警察官だったら、警視庁も主人公を退職させるようなことはしませんよね。
作者「沢木冬吾」
作者は1970年生まれ、岩手県出身の小説家です。
1999年にデビュー作「愛こそすべて、と愚か者は言った」で、第三回新潮ミステリー倶楽部賞高見浩特別賞を受賞しています。
作者のその他の作品として
・償いの椅子
・天国の扉 ノッキング・オン・ヘヴンズ・ドア
・ライオンの冬
・握りしめた欠片
などがあります。
「約束の森」は、2012年2月に刊行されました。
書評本「読まずに死ねるか!」、深夜プラスワン、「ハードボイルドだど」などで有名な内藤陳さん。
本作品が刊行される前年の2011年にお亡くなりになっています。
その内藤さんがもし本作品を読んでいたら、間違いなく絶賛していたと思います。
まとめ
私がこの本を知ったのはネットの情報です。
なにか面白い本はないか、と検索していたら、どなたかがこの本を推薦していたのです。
私、書評やレビューを100%信用するということはありません。
参考にはします。
この本も、面白くなければ途中でやめればいいや、という軽い気持ちで読みはじめました。
私のつけている読書記録によれば、「最初はせっかく買ったから読んでしまおう、と思い読み始めたが、面白くて、結局朝方の5時までかかって読んでしまった。」とあります。
私の悪い癖で、本が面白くなると最後まで読まずにはいられない。
次の日の仕事なんかどうでも良くなる。
まあ、だから出世できなかったんでしょうね。
他人の書評はあまり信用しないくせに、私の言うことは信用しろ、とは言いません。
もしかしたらあなたにとって面白い本かもしれません。
もし機会があれば読んでみてはいかがでしょうか。