「すべてがFになる」ドラマも秀逸だったがやはり原作が一番。

読書
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こんにちは、たどんです。
今回は、森博嗣の代表作「すべてがFになる」の紹介です。
いつか読もう読もうと思っていてなかなか読む機会に恵まれなかった作品です。

簡単なあらすじ

大学助教授の犀川創平は、彼の研究室の学生と、愛知県にある妃真加島(ひまかじま)に泊りがけの旅行に出かける。
その旅行には、犀川の研究室のメンバーではないが、犀川の勤務する大学の学生・西之園萌絵も参加していた。
妃真加島は、真賀田(まがた)家が所有する島で、真賀田家が設立したハイテク研究所がある。
そこでは、優秀な研究者が寝起きして研究を進めている。
現在、その研究所のトップは真賀田四季(しき)博士。
彼女は最高の天才と言われ、研究所の活動においても中心人物である。
しかし、彼女は、過去に殺人を犯し、研究所の一画に隔離されていた。
たまたま研究所を訪れた犀川と西之園は、真賀田四季博士の部屋から、両手両足を切断され、ウェディングドレスを身にまとった死体が発見される、という事件に遭遇する。
犀川と西之園は、その密室事件に挑むことになるが、その後も次々と殺人事件が起きる。

読みどころ

普通の人間が謎解きに挑む

主人公の犀川は、大学の助教授をしているぐらいだから頭はいいんです。
でも、シャーロック・ホームズではありません。
与えられたヒントから真実をズバッと解明することなどできません。
だから面白いんですね。

物怖じしない西之園萌絵

シャーロック・ホームズにはワトソンがいるように、昔から謎解き小説には主人公を補佐する役回りの存在がつきものです。
本作でいえば、頭はいいがさほど行動的ではない主人公の犀川を、何事にも物怖じしない現代風の女性西之園萌絵がいい味を出しています。
現実には殺人事件などに遭遇したらビビってしまい、決してそれ以上深入りなんかはしないでしょう。
しかし、西之園萌絵という女性を補佐役というか相棒にしたのは著者のヒットではないでしょうか。
読んでる方も男子学生が補佐役をつとめるより、女性の西之園萌絵ちゃんの方が楽しいです。

設定にやや無理があるが・・・

愛知県の孤島にそびえ立つハイテク研究所、そこに多くの優秀な人材が寝泊まりして研究に励んでいる。
刑務所じゃあるまいし、そんな研究所あり得ない、どうやって採算をとっているんだろうか。
また、ネタバレになってしまうので詳細には話しませんが、物語の進展に連れて考えられない人間も登場する。
ちょっと話を盛りすぎだろう、という気がしないわけではありません。
でもいいんです。
小説は面白ければそれでいいんです。

時代に先駆けたハイテク小説

本作品の中には
・ P1ロボット
・ 研究所独自のOS「レッドマジック」、「UNIX」
・ 研究所のサブシステム「デボラ」
・ 16進法
など、私のようなおっさんには聞き慣れない言葉がポンポン出てきます。
しかし、全く理解できない、というわけではなく、物語の流れでなんとなく理解できるので、その点は安心してもらって結構です。
ちなみに私は、読んでいてよくわからないところはサラッと流し読みしたところもあります。
小説中の事件は、1996年に起きた、という設定です。
1996年といえば、まだインターネットが世間一般に知られる前のことで、まだまだコンピュータやネットワークについての知識を持っている人はほとんどいませんでした。
著者は工学博士で、元名古屋大学助教授だそうです。
工学関係に明るい著者だからこそ書けた小説なんですね。

含みをもたせた結末

著者は当初から、本作の続編のような小説を念頭に置いていたのでしょう。
実際本作はその後シリーズ化しています。
そして、本作に出てくる登場人物のうち何人かは、その後の森博嗣の作品にも登場してきます。
また、続編が読みたくなるような結末の書き方が上手い。
本作を読んだらもう最後、あなたも森博嗣の術中にハマります。

森 博嗣

1957年生まれ、私よりちょっと年下です。
小説家ですが、工学博士。
そして元名古屋大学の助教授をされていたそうです。
奥さんは「ささきすばる」というイラストレーターだそうですが、私は存じ上げません。
本作「すべてがFになる」で、1996年、第1回メフィスト賞を受賞しています。
メフィスト賞というのは、講談社が発行する文芸雑誌『メフィスト』から生まれた公募文学新人賞だそうです。

S&Mシリーズ

本作は、森博嗣の「S&Mシリーズ」の第1巻です。
Sは犀川創平、Mは西之園萌絵の頭文字をとったもの、というのはおわかりになると思います。
本作品はベストセラーとなり、漫画、ゲーム、テレビドラマ、テレビアニメにもなっています。
S&Mシリーズは全10巻。
参考までその作品を、この順番に読んだほうが良いであろう順に列挙しておきます。
① 「すべてがFになる」
② 「冷たい密室と博士たち」
③ 「笑わない数学者」
④ 「詩的私的ジャック」
⑤ 「封印再度」
⑥ 「幻惑の死と使途」
⑦ 「夏のレプリカ」
⑧ 「今はもうない」
⑨ 「数奇にして模型」
⑩ 「有限と微小のパン」
なお、森博嗣のシリーズ化はS&Mシリーズだけではありません。
その他にも
・ 「Vシリーズ」
・ 「四季シリーズ」
・ 「Gシリーズ」
・ 「Xシリーズ」
などがあり、私もまだ全部読んだわけではありません。
興味があれば是非チェックしてみてください。

テレビドラマ化

武井咲と綾野剛という豪華なダブル主演で「すべてがFになる」がテレビドラマ化されています。
もう5年も前になりますが、毎週火曜夜9時から放送されていました。
全10話。
西之園萌絵役を武井咲が演じたわけですが、西之園萌絵はいわゆる「リケジョ」理系女子ですよね。
やはり美人さんはどんな役を演じてもサマになりますね。

まとめ

「すべてがFになる」というタイトルを初めて見ると、どんな小説だ?と興味を惹かれます。
推理小説といえば、一般的には「〇〇殺人事件」などでしょう。
上に「S&Mシリーズ」を10冊ほどあげましたが、森博嗣の作品はどれも凝ったタイトルですね。
私の読書記録には、「面白かった。ストーリー展開は結構意外性がある。」と書かれています。
本作のような小説を読んでいていつも思うのですが、多くの小説家が苦労して、ウンウン唸りながらかきあげた小説を、好きな時に好きなだけ読める幸せ。
若い頃、「将来は推理小説作家になりたい。」などと思ったこともありましたが、小説家なんぞ目指さなくて良かった。
私には、天と地がひっくり返っても本作のような小説は書けません。
今後も読み手に徹します。

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